ケミカルライトはお祭りやライブなどでよく見かける化学発光に基づいた照明器具です。よく見かけるのは棒状のケミカルライトであり、使用時に商品を折ることで、発光が始まります。このケミカルライトは暗闇で光るがゆえに猫が口にしてしまい、中の溶剤を食べてしまうことも少なくありません。では、猫がケミカルライトの内液を食べてしまうとどのようなことが起こるのでしょうか?
ケミカルライトに含まれる成分
ケミカルライトに含まれる溶剤の約90%がフタル酸エステルと呼ばれる化学物質になります1)。そして、フタル酸エステルの中でもフタル酸ジブチルという化学物質が主成分になっていることが多いようです2), 3)。このフタル酸ジブチルはラットやマウス、ハムスター、モルモットなどの多くの哺乳類でその毒性が示されています。
しかし、その毒性については比較的弱く、ラットにおいては経口投与がされた際の半数致死量が8g〜9g/kgとなっています1)~3)。とはいえ、多量に摂取してしまうと細胞内にあるミトコンドリアの呼吸(ATPと呼ばれるエネルギーの合成)を妨げると考えられています3)。
猫においては多量摂取が起こることは稀です。なぜなら、フタル酸ジブチルなどはとてつもなく苦いため、猫が口にしても自主的に摂取を行わなくなるからです。
猫がケミカルライトを食べた時の症状
猫がケミカルライトの溶剤を食べた直後には次のような症状が出現します2), 3)。
- 流涎(よだれが大量に出ること)
- 嘔吐
- むかつき
- 種々の神経症状
- 多動
- 攻撃的な行動
上記の症状が出現するのはかなり短時間であり、治療の有無にかかわらず数分後には元に戻ります3)。逆に元に戻らない場合には急いで動物病院に連れて行った方が良いでしょう。
猫がケミカルライトを食べた時の対処法
では、猫がケミカルライトを食べた時にはどのような対処をすれば良いのでしょうか?まずは、口の中にある苦いものを取り除き、味覚に誘発されている嘔吐やむかつきなどを取り除いてあげる必要があります。その際には、猫が大好きなキャットフードやおやつなどを与えていきます2), 3)。
次に、猫を暗い部屋に連れて行き、蛍光成分が猫の体のどこに付着しているのかを把握する必要があります2)。そして、付着部位を入念に水や石鹸などで洗い、体に付着した溶剤を綺麗に洗い流してください3)。これにより、猫がグルーミングをした際に再び有毒成分が猫の体内に入らないようにします。もし、目に入った場合には大量の流水で目を洗うようにしてください3)。
猫が大量に溶剤を摂取し、症状が続く場合には、すぐに動物病院に猫を連れて行き、適切な治療を行ってもらいましょう。解毒剤はありませんが通常の薬物除去や対症療法などが行われることになります3)。
まとめ
猫がケミカルライトを摂取した際には、その中に含まれるフタル酸エステル(多くはフタル酸ジブチル)が毒性を発揮し、種々の症状が出現します。幸いその毒性は弱いために命に関わることや長期的な障害につながることはなく、すべての猫が最小限の処置で健康な状態に回復します2), 3)。しかし、最善なのはケミカルライトの摂取を未然に防ぐことであり、猫の手のとどかない場所にケミカルライトを保管しておくことが重要です。
参考文献
1) 公益財団法人 日本中毒情報センター2017/10/19 accessed.
2) Little SE. August’s Consultation in Feline Internal Medicine, Volume7. Saunders, Missouri ; 1ed, 796-797. 2015.
3) Rosendale ME. Glow jewelry (dibutyl phthalate) ingestion in cats. Veterinary Medicine(1999). 94:703
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