可愛い猫ちゃんの毛がたくさん抜けていたら、飼い主としてはとても心配になりますよね。猫に抜け毛を引き起こす原因としては、多くの病気や状況が考えられます。抜け毛と一口に言っても、正常と思われるものもあれば、深刻な病気を意味するものまで多岐にわたるので、今回は脱毛の原因となりうる一般的な原因を以下に挙げていきたいと思います。
目次
アレルギー性もしくは刺激性接触皮膚炎
皮膚に塗布する抗生物質、ニッケルなどの鉱物、ゴムや羊毛、プラスチックなどの素材、染料や消臭剤などに暴露(有害物質や病原菌などにさらされること)することにより起こるアレルギー反応、アメリカツタウルシなどの刺激性物質による炎症反応。通常、いくつかの暴露を伴う。
症状:原因物質が触れた皮膚の発赤、小さな発疹や水疱どが特徴で、慢性的なかゆみや抜け毛が生じる。
治療・対処法:抗ヒスタミン薬やステロイドによる薬物療法。アレルゲンや刺激物質へ猫が暴露しないようにする。
アトピー
花粉やハウスダスト(ダニ・カビ)などを吸引することにより引き起こされるアレルギー反応。
症状:四肢を異常に舐める、耳の炎症、かゆみ、発赤、抜け毛などが生じる。
治療・対処法:オメガ3脂肪酸サプリメント、抗ヒスタミン薬による治療。免疫療法。こまめなシャンプーやアレルゲンへの暴露をできる限り減らす。
ツメダニ(ウサギツメダニ):疥癬
ツメダニの感染
症状:かゆみ、鱗状皮膚(乾燥してポロポロしている)、重症化すると抜け毛を生じる。
治療・対処法:ピレトリンによるツメダニの駆除、ツメダニ駆除の注射、部屋を清潔に保つ
顔面(耳介前)脱毛症
通常は目と耳の間の毛の減少が認められる
症状:一般に14〜20ヶ月の猫で見られることがある。短毛で、暗い色の猫に多い傾向がある。
治療・対処法:病気ではなく正常なので、心配ない。
ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液によって引き起こされる重篤なアレルギー反応
症状:激しいかゆみ、発赤、抜け毛、丘疹、痂皮、落屑の蓄積などを生じる。
治療・対処法:かゆみにはステロイド、抗ヒスタミン薬による薬物療法。猫自身と環境のノミのコントロールを行う。
食物アレルギー
食物に対するアレルギー反応
症状:四肢を舐める、耳の炎症、かゆみ、発赤、抜け毛
治療・対処法:原因となる食物を特定し、その食物の摂取を避ける。
妊娠・子育て中
妊娠や子育てによるストレスにより、過剰な抜け毛が生じる。このほかにも、病気や手術などのストレスなどでも引き起こされうる。
症状:突然のそして広範な大量の抜け毛
治療・対処法:環境を見直しストレス緩和に努める。ストレスが軽減できれば、被毛は自然と元どおりになる。
甲状腺機能亢進症
この疾患を有した猫の3分の1が、過剰な甲状腺ホルモンの分泌により皮膚に何らかの問題を抱えると言われる。
症状:抜け毛(毛が簡単に抜け落ちるようになる)、脂漏症、過剰なグルーミングによる発赤などを生じる。
治療・対処法:甲状腺の部分切除、放射性ヨウ素療法、チアマゾール(抗甲状腺薬)
マラセチア
通常はその他の疾患の二次的な症状として現れることが多い。人や動物の皮膚などに常在する真菌で、皮膚の抵抗力が低下すると増殖する。
症状:かゆみ、発赤、抜け毛、脂漏性のフケ、進行すると色素性沈着が生じる。
治療・対処法:基礎疾患をしっかり治療し、免疫力を回復させる。真菌に対してはケトコナゾール、ミコナゾールによる薬物療法。シャンプーにより清潔を持つ。
白癬
糸状菌による皮膚感染症の総称で、いくつかのタイプに分けられる。
症状:抜け毛、フケ、皮膚の硬化、かゆみ
治療・対処法:ミコナゾール、石灰硫黄合剤、グリセオフルビン、イトラコナゾールの経口投与。
脂漏症
先天的になりやすい個体もいるが、二次的な症状として罹患することが多い。
症状:脂っぽい滲出物、カビに似た悪臭、被毛のべとつき、フケの増加、紅斑、引っ掻きによる抜け毛などが見られる。
治療・対処法:基礎疾患がある場合は、基礎疾患の治療をしっかり行う。抗脂漏性シャンプーを使用し、清潔を保つ。脂肪酸のサプリメント。
日光皮膚炎
皮膚の防御能力を超えて,過度の紫外線に照射された場合に皮膚に起こる障害で、一般にいわれる日焼けである。被毛の白い猫で生じやすいと言われる。
症状:発赤、軽度の痛み、抜け毛、鱗状皮膚(鼻や耳)、重度になると丘疹や潰瘍を生じる。
治療・対処法:さらなる紫外線への暴露を避ける(特に昼間)。屋内でも日焼け対策をする。ステロイドの服用。
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参考文献
Birchard, SJ; Sherding, RG (eds.) Saunders Manual of Small Animal Practice. W.B. Saunders Co. Philadelphia, PA; 2000.
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Griffin, C; Kwochka, K; Macdonald, J. Current Veterinary Dermatology. Mosby Publications. Linn, MO; 1993.
McKeever, PJ; Harvey, RG. Skin Diseases of the Dog and Cat. Iowa State University Press. Ames, Iowa; 1998.
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Paterson, S. Skin Diseases of the Dog. Blackwell Science Ltd. London, England; 1998.
Scott, D; Miller, W; Griffin, C. Muller and Kirk’s Small Animal Dermatology. W.B. Saunders Co. Philadelphia, PA; 2001.
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