てんかんとは、脳内の電気的な神経活動の障害が原因で様々な症状が引き起こされる病気です。本来ならば規則正しいリズムで電気的な活動が生じている大脳の神経細胞が、なんらかの原因によりリズムを乱し、脳内で激しい電気的興奮が生じることで起こります。
てんかんの種類
てんかん発作は、このような過剰な電気的興奮が脳のどこで起こったか、そしてどのように広がっていったかにより、焦点発作と全般発作に分けられます。
焦点発作とは、過剰な電気的興奮が脳の一部分(局所的)で生じている場合を言います。意識が明確、あるいは意識障害があっても軽微なものであり、部分発作とも呼ばれます。
対して、脳全体にわたる広い範囲で過剰な興奮が起こる発作を全般発作と呼びます。ほとんどの場合は意識消失を伴い、ここが焦点発作と大きく異なるところです。
猫ではなく人にはなりますが、筆者は焦点発作を起こした方、全般発作を起こした方、どちらも見たことがあります。全般発作を起こされた方は意識を失うためその場で倒れ、手足を硬直させるなどすぐに分かりますし、初めて見た方は何事かと驚いて慌ててしまいました。
対して、焦点発作の場合は意識があり、体の一部分での反応なので、知識のない人であれば何となく違和感を感じても発作が起きているとは気づかないかもしれません。
猫のてんかん
そして、当然ですが猫も大脳を持つため、てんかんが起こります。そして、焦点発作は脳のいろんな部位で起こりうるのですが、多くの研究が特に猫の焦点発作は側頭葉に起因することを示唆しています。また、てんかんを有している猫のMRIでは海馬での変化も見られ、また病理組織学的にも海馬の硬化症や壊死が認められています。
典型的に、てんかん発作を呈している猫は、舌なめずりや舌打ち、もぐもぐと口を動かす、ごくんと飲み込む、顔面を痙攣させるなど口部顔面自動症を生じます。症状が進行すると、運動停止や自律神経症状や行動症状が現れてくるかもしれません。

猫のてんかんの症状に対する探索は少ない
1950年代から1980年代にかけて、猫はしばしば神経生理学的な実験や電気生理学的研究に使用されており、これらの実験のおかげでてんかんに関する重要な知見が多く得られました。しかしながら、これらはあくまでも人のてんかんに関連した実験であり、猫自体におけるてんかんの研究はほとんどなされて来ませんでした。
猫のてんかん症状:6つのステージ
最近では猫のてんかんそのものに対する研究も進められ、その結果、猫のてんかんの臨床症状は焦点発作から全般発作に移行するまでが、おおよそ6つのステージに分類されています(S. Kitz et al., 2017)。
1)注意機能の変化
2)思考や動作の停止
3)口部自動症状(舌なめずり、もぐもぐと口を動かす、ごくんと飲み込む)
4)顔面の痙攣
5)頭の回転、うなづくような仕草
6)全身性の痙攣
まとめ
猫のてんかんの症状について、このような体系だった記述がなされたのは大きな一歩と言えるでしょう。そして、てんかんの症状と分かりにくいような、ステージ1や2のような状態がてんかんの初期症状であることの認識を広めることで、より適切な時期に介入が行えるようになることが期待されます。
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参照論文
S. Kitz, J.G. Thalhammer, U. Glantschnigg, M. Wrzosek, A. Klang, P. Halasz, M.N. Shouse, and A. Pakozdy.Feline Temporal Lobe Epilepsy: Review of the Experimental Literature. J Vet Intern Med 2017 (クリエティブ・コモンライセンスのため誰でも読むことができます。)
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