
ネットの画像で人間のような顔をしているワイルドな猫を見たことはありませんか? その猫のほとんどが今回紹介するマヌルネコです。
マヌルネコはネコ科の動物では珍しく瞳孔が丸いために、人間のように見えてしまい、よくネットで紹介されたりします。また、最も高価なネコ科動物としても有名です。
Pallas’s Cat
マヌルネコは英語でPallas’s Catとも呼ばれます。これはPeter Pallas氏がこのネコを最初に報告しているためです。その際、Pallas氏はマヌルネコが長毛で鼻ぺちゃ、がっしりとした体型からペルシャの祖先であると推論しました。もちろん、現在ではその仮説は否定されています。

マヌルネコの特徴
被毛と体型
マヌルネコは体長50-65cm、尾長21-31cm、体重2.5-5.0kgと一般的なイエネコと同じような体型をしています。しかし、被毛の密度が異常に高いため、イエネコよりも大きく見えてしまいます。被毛の密度が高いという特徴はマヌルネコが標高の高い、雪がある場所でも生息する事を可能にしています。
被毛の色は薄い灰色〜黄褐色と様々であり、被毛の先端は白くなっています。顔の横には左右に2つの黒い線が入っており、尻尾の先には黒い輪状の縞が4〜8つ存在しています。
瞳孔は円形
イエネコの瞳孔がスリットのように縦長であるのに対して、マヌルネコの瞳孔は円形です。これがマヌルネコが人感を醸し出す要因です。顔は平たく、耳は顔の低い位置に存在しており、これが開けた場所において狩りを行うことを容易にしていると言われています。
飼育下では12歳まで生きることが知られています。

マヌルネコの生息域と生息環境
マヌルネコは中央アジアに分布しており、標高の高いステップなどに暮しています。ステップといっても岩場が多い場所から草原が多い場所など様々な環境に適応しており、行動圏が広いことから、縄張りにはそれらの場所が混同していることが多いとされています。
マヌルネコは降雨量が少なく、湿度が低いところに生息しており、生息域の気温は様々です。ただし、積雪が10cm未満のところに暮らすことが多く、積雪が15~20cmにもなるところには生息することがないということが報告されています。
洞穴などで眠り、子育てを行い、中には他の動物(主にマーモット)が作った穴ぐらなどで暮らすものもいます。

マヌルネコの行動
発見当初は夜行性であると認識されていましたが、最近の研究が薄明薄暮性であることを示しています。ただし、イエネコと同じようにいつでも行動することが可能です。
狩り
マヌルネコはナキウサギを主に狩ることで知られており、マヌルネコの餌の約50%をナキウサギが占めているということも報告されています。ナキウサギの他にも、イエネコと同様にげっ歯類や鳥、昆虫などを狩ります。
狩りの仕方はイエネコに似ており、追いかけることもあれば、獲物を待ち伏せすることもあります。獲物がいる穴が浅い場合には手を突っ込んで獲物を捕らえることもあります。
行動圏
マヌルネコの行動圏は広くメス猫で7.4〜125km2でオス猫で21〜207km2であり、その密度は100km2あたりに2~6匹ほどと言われており、密度がかなり低いことがわかります。
社会性に関しては今のところ不明です。
マヌルネコの生殖行動
マヌルネコは季節性の生殖行動をとります。多くの場合、交尾は12月末〜3月の間に行われ、3月〜5月に出産します。飼育下のマヌルネコの妊娠期間は66〜75日程度であると言われており、一度に1~6匹の子猫を生みます(3~4匹が一般的です)。生後9~10ヶ月で性成熟を迎えるとされています。
死亡率が高い
死亡率は高く、約68%もの子猫が生存できないとされています。成猫においても死亡率が高く、約50%と言われています。天敵による捕食や人間による介入などがその高い死亡率の原因になっています。
ちなみに、標高が高いところに生息していたために免疫力が低く、標高の低い場所での飼育は難しいようです。

マヌルネコの天敵
マヌルネコの天敵にはワシ、アカギツネ、イエイヌ、オオカミがいます。また、人間もマヌルネコの頭数の減少に大きく関与しており、中でも生息域の破壊や狩猟、殺虫剤の影響が有名です。
人間の影響
マヌルネコの多くは中国やモンゴルに生息しています。そのため、それらの地域において人間の開発が進んだり、家畜の数が増加するにしたがって、マヌルネコの生息域の破壊が進みその数が減少しています。
また、中国やモンゴル、ロシアなどでは1900年代にマヌルネコの毛皮目的での狩猟が盛んに行われており、年間50,000匹ものマヌルネコが犠牲になったという報告もあります。1988年にはマヌルネコの狩猟が禁止され、毛皮の取引も違法となりましたが、モンゴルでは現在でも申請を行えば狩猟が行えます。そのため、現在でも中国やロシアなどで毛皮の売買が行われるケースがあるようです。
中国やモンゴルなどではナキウサギやげっ歯類などの数をコントロールするために大量の毒(殺虫剤など)が使用されています。そのため、そのような毒に侵されたナキウサギやげっ歯類を捕食するマヌルネコが二次的に毒殺されるということも多いようです。
まとめ
マヌルネコはネットの画像でよく見かけますが、その頭数が少ないということは知りませんでした。現在、国際自然保護連合 ICUNにおいては準絶滅危惧に該当しています。人間が与える影響はかなり大きいということを改めて実感しました。
また、マヌルネコの行動や体型などは比較的イエネコと似ているという印象を受けました。どちらかといえばリビアヤマネコに似ているといった方が良いのかもしれませんが…
日本では東京の上野動物園などで飼育されているため、日本の動物園でも見ることができますので、気になる方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか?
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参考文献
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