アニメ「けものフレンズ」の影響を受け、サーバル Leptailurus serval が人気のようです。この様子だとサーバルとイエネコを交配したサバンナ・キャットにも人気が出てきそうな気がします。そうならないことを祈りますが…
サーバルの概要
サーバルはネコ科に属していますが、それ以降の「属」に関しては明確化されていません。アジア・ゴールデンキャットやカラカルといったネコ科動物と同じ祖先を持ち、540万年前に分岐したものだと考えられています(O’Brien and Johnson, 2007.)。
サーバルの生息地は主にアフリカのサハラ砂漠より南の地域、サブサハラアフリカなどになります。モロッコなどのアフリカ北部の地域でもわずかながら報告があるようですが、その数は極めて少ないとされています(IUCN)。
主に水が多く、長い草木が茂った草原に生息しており、砂漠や熱帯雨林などの地域には生息する事はありません。
平均寿命は10歳であり、人工的な飼育環境では22.4歳くらいです(Livingston, 2009.)。
サーバルの身体的特徴
サーバルの平均的な大きさは、肩〜尻尾にかけてが60cmとであり、ネコ科動物の中では中型と言えます。スリムな体型で、体重はオスで9-18kg 、メスで9-13kgです。
また、体の大きさに対する足と耳の比率が他のネコ科動物に比べてかなり大きく、長い足と耳が特徴的な容姿と言えるでしょう。
生息地によりスポット柄が異なることも知られており、森の近くに生息しているサーバルよりも草原などに生息するサーバルの方が被毛のスポット柄(斑点)が大きくなるようです(ADW)。
サーバルの狩り
サーバルはイエネコと同じように基本的には薄明薄暮性であり、たまに日中などにも狩りを行います。ただし、日中や夜ではサーバルは休憩していることが多いようです。
サーバルの狩りの成功率は48%と極めて高く(ADW)、ほとんどイエネコと同じような成功率になります。狩りをするときの行動もイエネコと似ており、獲物をみつけ、静かに近づき、ストーキングを行い、飛びかかり、前足で獲物を捕獲するといった感じです。しかし、場合によっては岩場の隙間や洞穴などに前足を突っ込んで獲物を捕ることもあるそうです。
サーバルは1~4mぐらい先までの獲物に対して飛びかかることができ、空中の獲物に対しては約1.5m程度は飛びかかることができます。
獲物の比率としては93.5%の獲物がラットやマウス、トガリネズミなどのげっ歯類であり、鳥はたったの5%になります(Bowland, 1993.)。ちなみに、残りの数パーセントは爬虫類や昆虫などです。なぜか、サーバルはジャンプ力がすごいため、鳥ばかりを食べていると思われがちですが、実はそうではないということですね。この研究結果をもとに考えると、某動物園にて行われているような、高い場所にお肉を釣り、サーバルにジャンプさせて取らせるというイベントはただの見世物に過ぎないのかもしれません。少し考えさせられます。
サーバルは捕獲した獲物で遊ぶことでも知られています。この行動はイエネコでも観察されます。サーバルの場合は子供のサーバルにてよく観察されるようですが、一部では大人のサーバルも行うようです。
サーバルの社会性
サーバルは単独行動を好むため、基本的には他のサーバルと一緒に行動するということはありません。しかし、一部ではオスのサーバルとメスのサーバルが出くわした際に、短時間ではあるものの、一緒に狩りをしたり休んだりといった行動を見せることがあることも報告されています(ADW)。
単独行動を行うサーバルですが、繁殖行動を行う時や縄張りを争う際には他のサーバルなどとやり合うことがあります。
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繁殖行動と子育て
生殖行動に関しては、オスの縄張りの中に複数のメスが存在しており、メスが発情期の前などになるとオスに求愛行動を行います。サーバルの発情期自体は春に訪れることが多く、たった1日程度しか発情期がないことから、メスが積極的に行動する理由がわかるような気がします。ちなみにサーバルは1匹のオスに対して複数のメスが交尾を行う、一雄多雌という特徴があります。
交尾が終わるとメスは洞穴を見つけ、65~75日の妊娠期間を経て、2~3匹の子供を産みます。子供のサーバルは1年間は母サーバルと共に暮らしますが、その後母サーバルに追い出され、自身の縄張りを確立するようになります。この子育ての間、オスは何もせず、母サーバルが獲物を捕らえたりします。
マーキング
サーバルは他のサーバルと不必要な対峙を避けるために、イエネコと同じようにフェロモンなどの化学物質を用いてコミュニケーションをとります。そのマーキング方法もイエネコとほとんど同じであり、スプレー行動、排便、フェイシャル・ラビング(顔を擦り付ける)、爪とぎなどで行っていきます。
まとめ
サーバルはメスの方が行動的かつ活動的であり、姉さん女房感がものすごく強いような気がしました。また、サーバルは猫と似たような習性などを有しており、イエネコと交配されたサバンナ・キャットが誕生する意味も分かるような気がします。
一部の動物園で高い場所にお肉を釣り、サーバル・キャットをジャンプさせるというイベントを実施しているようですが、本当にそれがサーバル・キャット本来の習性を再現しているのかについては懐疑的です。それを一種の環境エンリッチメントと捉えるのであれば良いのかもしれませんが、少し見世物感が強くて複雑です。それよりも、げっ歯類に似せたおもちゃなどで遊んだり、お肉を様々なところに隠したりする方が良いように思えます。このあたりは議論の余地がありそうですが…
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参考文献
O’Brien, S.J. and Johnson, W.E. 2007. The evolution of cats. Scientific American July: 68-75.
Bowland, J., M. Perrin. 1993. Diet of serval Felis serval in a highland region of Natal. South African Journal of Zoology, 28/3: 132-135.
Livingston, S. 2009. The nutrition and natural history of the serval (Felis serval) and caracal (Caracal caracal). The Veterinary Clinics of North America., 12/2: 327-334.
Geertsema, A. 1991. The Servals of Gorigor. Natural History, 100/2: 52-32.
参照サイト
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